第10回:父にほめられたかった?!

父親との関係を見直す

以前「気づかなかった父からの承認」について書きました。今回は少し違う角度から、父との関係を振り返ってみたいと思います。すでに起きていた承認に気づく話ではなく「ほめられたくて、無意識にやっていた行動」についてです。

道順を覚えようとしていた

小学校低学年の頃、遠足に行くたびに、僕はある行動をしていました。バスに乗って目的地へ向かう間、誰とも話さず、窓の外をじっと見ながら、目的地までの道順を覚えようとしていたのです。

なぜそんなことをしていたのか、その理由が、自分でもずっと分かりませんでした。ただ、そういう記憶があるだけでした。

一度通った道はすべて覚えている父

父との関係を文章にして読み返しているうちに、思い当たることがありました。

僕の父は、方向感覚がとても優れていて、一度通った道は、すべて覚えているような人でした。沖縄県内なら、東西南北さえ意識していれば、どんな細い道でも裏道でも、すでに知っている道とつなげて覚えていたようです。車に乗っているとき、「今走っているのは、東か西か?」と、突然聞かれたこともあります。

もしかしたら僕は、あの父の姿を見て、「道順を覚えられたら、ほめてもらえるかもしれない」と、子供心に思っていたのかもしれません。

実際にほめられた記憶は、残念ながらありません。それでも、遠足から帰って「今日は、こういう道を通って、どこどこに着いたよ」と話せたら、父ちゃんが喜んでくれるんじゃないか。そんな期待を抱いて、バスの中で黙って道順を覚えていた自分の姿が、今なら想像できます。

英語を続けてきた理由

同じような動機は、他にもあったのではないかと思っています。

例えば、英語の勉強です。以前の記事にも書いたように、父が買ってくれた「トーキングカード」がきっかけで、僕は英語に触れるようになりました。大学受験に失敗して上京したときも、NHKラジオの基礎英語を聞き直すところから、また始めました。その後、英検1級に合格し、英語の通訳の仕事にも就くことができました。

振り返ってみると、この道のりのどこかに、「英語ができるようになったら、父ちゃんに認めてもらえるかもしれない」という気持ちが、ずっと流れていたような気がします。

道順を覚えること。英語を勉強し続けること。一見ばらばらに見える二つの行動ですが、その奥には「父ちゃんにほめてもらいたい」という、同じ動機が隠れていたのではないか。今は、そんなふうに感じています。

「なぜか続けていること」はありますか

大人になった今の自分がやっていることの中にも、動機をたどっていくと、「親に認めてもらいたかった」というところに行き着くものが、案外あるのかもしれません。仕事の進め方、頑張り方、何かを続ける理由。当たり前だと思っている自分の行動にも、子供の頃の気持ちが、静かに影響を与えていることがあります。

もし、あなたにも「なぜか続けていること」「理由は分からないけれど、昔からやっていること」があれば、それを一つ書き出してみてください。そして「それを誰に見てほしかったのだろう」と少し考えてみてください。

18の質問の中にも、12番「言われて嬉しかった、心に残る言葉」や、14番「自分の中に感じる、父とそっくりだと思う部分」を振り返る問いがあります。こうした問いが、今の自分と父親とのつながりを見つける手がかりになります。

自分の動機は見えにくい

ただ、自分がなぜそれを続けているのかは、一人ではなかなか見えてきません。僕も、遠足のバスの記憶と父の方向感覚がつながるまでに、何十年もかかりました。

「それは、誰に見せたかったんですか?」「できたとき、お父さんに話しましたか?」と聞かれて、初めて気づくこともあります。そして、「ほめてほしかったのに、ほめてもらえなかった」という気持ちに行き着いたとき、一人では少し寂しくなることもあるかもしれません。

一人で掘り下げるのが難しいと感じたら、お電話で一緒にお話ししながら、その奥にある気持ちをたどっていきましょう。子供の頃の自分が、何を求めて頑張っていたのか。それを言葉にするお手伝いをします。

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