Wikipediaによると、伊藤和夫先生は、「第一高等学校卒業を経て、1947年旧制東京大学哲学科入学後は病気療養を挟みつつ、1953年旧制東京大学哲学科を卒業した」となっています。
その記述に関連がありそうな、文章を「新・基本英文700選」から選び、その英文を覚えるために、物語を想像しました。
前回は、体力にも知力にも自信があった和夫青年が、過労と不眠から体を壊し、誰も予想しなかった急変によって、結核と向き合うことになったところまでをお話ししました。今回は、その先――医者との対話と、回復への道を描きます。
楽しんで、英文を覚えていただけると嬉しく思います。
物語は「具合が悪そうな和夫」から始まります。
具合が悪そうな和夫を見て「医者を呼びましょうか?」誰かがそう尋ねた。
332. 「医者を呼びましょうか。」「いや、それにはおよびません。」
“Shall I send for a doctor?” “No, thank you. There’s no need for one.”
しかし、その強がりも、長くは続かなかった。
友人が見かねて、こう言った。
692. 事態は急であるから一刻も待てないと彼は言った。
He said that the matter was urgent, and that there was not a moment to lose.
こうして、ようやく医者が呼ばれた。
医者は時間をかけて、丁寧に和夫を診察した。
244. 医者が患者を丹念に診察したおかげで、患者はどんどんよくなった。
The doctor’s careful examination of the patient brought about his speedy recovery.
床の中で、和夫は初めて、自分がどれほど危うい状態にあったのかを悟った。
197. そのときになってはじめて私は危険な事態に気がついたのである。
Not till then did I realize the danger of the situation.
医者は、いくつかの助言も与えてくれた。
医者から、最初に言われたのは、タバコのことだ。
690. 医者は私にタバコをやめなさいと言った。
The doctor advised me to give up smoking.
そして、しばらく空気の良い場所で療養することも勧められた。
495. 医者が勧めるので、どこかへ転地(療養)に出かけようと思っています。
I’m thinking of going somewhere for a change of air, since my doctor advises me to.
療養先での日々は、静かに過ぎていった。
朝、目を覚まし、今日もまた一日を迎えられたことに、和夫は自然と手を合わせたくなるような気持ちになった。
600. 次の日も太陽が昇ることを神に感謝しない日は、一日もない。
Not a day passes but (that) I thank God for another sunrise.
今回病に倒れて、良く言われていることがよく分かった。
490. 病気になってはじめて健康のありがたさがわかる。
People do not know the value of health till they lose it.
体力にも知力にも自信があった若者が、当たり前のように享受していた健康というものが、実はどれほど貴重なものだったか。それを失って初めて気づいたのだった。
早食いだった和夫は、療養先では、食事についても、注意された。
506. 野菜でも肉類でも、飲み込む前に、よく噛むことがとても大切である。
It is very important to chew your food, whether vegetable or meat, before you swallow it down.
食べる量については、腹八分を心がけるように言われた。
532. 食べすぎさえしなければ、何を食べてもよろしい。
You may eat anything so long as you don’t eat too much.
そして、療養先で毎朝深く息を吸い込むたびに、空気というものの存在を、これまでとは違う重みで感じるようになっていた。
391. もちろん空気は日光と共に、毎日の生活に欠かせぬものである。
Air as well as sunlight is, needless to say, indispensable to our daily life.
こうして和夫は、長い療養の末に大学へと戻り、1953年、旧制東京大学哲学科を卒業する。
体力を過信していた青年は、病を経て、体と、そして生きることそのものと、丁寧に向き合う一人の人間に成長していた。
予備校の教壇に立つ和夫は、最近よくこう思うのだった。
586. 命がいかに大切であるかを理解する人が、少なくなってきているようだ。
It seems that few people have come to realize how precious life really is.
以上、前回と今回に渡り「突然の病に倒れる」とのタイトルから関連のありそうな文章を『新・基本英文700選』から選び、物語を想像しました。
今回取り上げた英文を日本語から思い出しましょう
今回の物語に登場した12文です。日本語を見て、英文を思い出してみてください。新・基本英文700選内の番号も付記しました。
- 「医者を呼びましょうか。」「いや、それにはおよびません。」(332)
- 事態は急であるから一刻も待てないと彼は言った(692)
- 医者が患者を丹念に診察したおかげで、患者はどんどんよくなった(244)
- そのときになってはじめて私は危険な事態に気がついたのである(197)
- 医者は私にタバコをやめなさいと言った(690)
- 医者が勧めるので、どこかへ転地(療養)に出かけようと思っています(495)
- 次の日も太陽が昇ることを神に感謝しない日は、一日もない(600)
- 病気になってはじめて健康のありがたさがわかる(490)
- 野菜でも肉類でも、飲み込む前に、よく噛むことがとても大切である(506)
- 食べすぎさえしなければ、何を食べてもよろしい(532)
- もちろん空気は日光と共に、毎日の生活に欠かせぬものである(391)
- 命がいかに大切であるかを理解する人が、少なくなってきているようだ(586)
思い出せなかった英文は、エピソードに戻り、俳優になったつもりで、感情を込めたり、時にジェスチャーを交えて、英文を声に出して読むと、記憶として定着しやすくなると思います。試してみてください。
もし、「新・基本英文700選」がお手元になければ、ぜひ手に入れてください。そして、伊藤先生がどのような想いを込めて、一つ一つの単語や表現を選んだかを想像されると、記憶に残りやすくなると思います。
次回もどうぞよろしくお願いします。


コメント