基本英文700選を読んでいると、経済的な話題、お金に関する文章が、わりと取り上げられているとの印象があります。
第二次世界大戦後、日本国自体が困窮していたと思います。伊藤先生を含めて、多くの日本人が、経済的に苦しい思いをしていた時代だったと思います。
今回のブログでは、お金に関する伊藤先生のお考えがうかがえる文章を選び、英文を覚えるための物語を想像しました。楽しんで読んでいただけると、嬉しく思います。
学生時代の和夫は、おじさんの営む会社でアルバイトをしていた。ところが、給料をもらうと、その足で本屋に向かい、あっという間に使い切ってしまう。そんな和夫を見かねて、おじさんはいつもこう言っていた。
22. いつかは君も貯蓄の重要を悟るようになるだろう。
Some day you will come to realize the importance of saving.
147. 何か物を買う前に、それなしに済ますことができないかどうかを考えてみなさい。
Before buying anything, you had better ask yourself whether you cannot do without it.
それでも、和夫にはどうしても欲しいものがあった。
『オックスフォード英語大辞典』である。
学者たちが何年もかけて編んだ、あの分厚い辞典だ。
とても、アルバイト代だけでは手が届かない。
和夫は思い切って、おじさんに借金を申し込んだ。
だが、返ってきたのはこの一言だった。
209. 買う余裕がないものは、なしで済ませなさい。
What you cannot afford to buy, do without.
やがて大学を卒業するとき、成績優秀だった和夫は、大学側から助手として残るよう説得された。しかし、助手の給料では生活していくのがやっとで、自由に本を買うことすらできなくなるのは、目に見えていた。和夫はこう言って、大学に残る道をあきらめた。
482. お金があったら、そうしたいのです、ところが実はどうすることもできないのです。
If I were rich, I would do so. As it is, I can do nothing.
予備校で教えるようになってから、最初は電車で通勤していた。しかし、駅までの道のりや、待ち時間が惜しくなり、いつしかタクシーを使うようになっていた。その様子を見た同僚が、いっそ自家用車を持ってはどうかと勧めてきた。でも和夫は、こう言って断った。
6. たしかに車は便利だが、結局高いものにつく。
A car is convenient, to be sure, but, in the end, it will prove expensive.
車本体の値段だけでなく、駐車場代や車検など、さまざまな経費がかかることを考えると、必要なときにタクシーを使う方が、結局は安く済む。むしろ、車を持てば、そうするとお金がその2倍かかるだろう、と和夫は思っていたのだ。
695. そうするとお金がその2倍かかるだろう。
It would cost twice as much as that.
こうした暮らしの中で、和夫の中には、いつも一つの考えがあった。
461. 真の富は財産ではなくて、人柄である。
True wealth does not consist in what we have, but in what we are.
だからこそ、あるときアメリカ人の価値観についてこう聞いて、少しびっくりしたことがある。
114. アメリカ人は、人が稼ぐ金額をその人の能力を測る尺度にすると言われている。
Americans are said to regard the amount of money a man makes as a criterion of his ability.
でも和夫が疑問に思ったのは、別のことだった。お金をたくさん持っているはずの人の中に、どこか不幸せそうに見える人がいるのは、なぜだろう。考えた末、こう結論づけた。
584. どんなに財産があっても、どん欲な人間は満足できない。世界中の財宝を集めても幸福にはなれない。
No amount of wealth can satisfy a covetous man. Not all the treasure in the world makes him happy.
いずれにしても、和夫はいつもこう考えていた。
565. 私は不正な手段で金をもうけるよりも、貧乏の方がよい。
I would rather be poor than make money by dishonest means.
受験英語の神様と言われるようになった今、和夫の収入は、若い頃とは比べ物にならないほどになっている。それでも、あの頃身についた倹約の癖は変わらない。
最近、和夫が思うのは、税金のことだ。
196. 浪費する人を守るために倹約する人に税金をかけるのは、賢明なことではないし、結局はためにならないのである。
It is not wise, nor in the long run, is it kind, to tax the thrifty for the wasteful.
貧しさの中で身についた倹約の習慣は、生涯、和夫から離れることはなかった。お金は、大事なものだった。でも、それがすべてではないということを、和夫は誰よりもよく知っていたのだ。
次回は、基本英文700選の文章を覚えるために、また別の角度から、伊藤和夫先生について想像を膨らませたいと思います。
日本語から英語を思い出しましょう
今回の物語に登場した11文です。日本語を見て、英文を思い出してみてください。新・基本英文700選内の番号も付記しました。
- いつかは君も貯蓄の重要を悟るようになるだろう(22)
- 何か物を買う前に、それなしに済ますことができないかどうかを考えてみなさい(147)
- 買う余裕がないものは、なしで済ませなさい(209)
- お金があったら、そうしたいのです、ところが実はどうすることもできないのです(482)
- たしかに車は便利だが、結局高いものにつく(6)
- そうするとお金がその2倍かかるだろう(695)
- 真の富は財産ではなくて、人柄である(461)
- アメリカ人は、人が稼ぐ金額をその人の能力を測る尺度にすると言われている(114)
- どんなに財産があっても、どん欲な人間は満足できない。世界中の財宝を集めても幸福にはなれない(584)
- 私は不正な手段で金をもうけるよりも、貧乏の方がよい(565)
- 浪費する人を守るために倹約する人に税金をかけるのは、賢明なことではないし、結局はためにならないのである(196)
思い出せなかった英文は、エピソードに戻り、俳優になったつもりで、感情を込めたり、時にジェスチャーを交えて、英文を声に出して読むと、記憶として定着しやすくなると思います。試してみてください。
もし、「新・基本英文700選」がお手元になければ、ぜひ手に入れてください。そして、伊藤先生がどのような想いを込めて、一つ一つの単語や表現を選んだかを想像されると、記憶に残りやすくなると思います。
次回もどうぞよろしくお願いします。


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