第10回:700選を覚える2つの道:物語とコアイメージ

基本英文700選を覚える

第9回までは、伊藤和夫先生の人生を想像しながら、700選の英文を物語の中に置いて覚えてきました。ところが第11回からは、急に「as」という一つの単語の話が続きます。

「どうして急に変わったの?」と思われた方もいるかもしれません。今回は、その理由と、このブログで僕が考えている700選の覚え方の全体像をお話しします。

僕が700選を覚えられなかった理由

第1回でも書きましたが、僕は若い頃、700選を何度も覚えようとして、何度も止まりました。

振り返ってみると、理由は大きく2つあったと思います。

一つは、英文が「ただの例文」にしか見えなかったことです。誰が、どんな場面で、どんな気持ちで言った言葉なのか。それが想像できないので、覚えても記憶に残りませんでした。

もう一つは、同じ単語が、文によってまったく違う意味に訳されていることでした。たとえば as は「〜と同じくらい」「〜のように」「〜なので」「〜として」「〜につれて」と、文ごとに訳が変わります。一文ずつ訳を丸暗記しようとして、頭の中がばらばらになっていました。

この2つの壁には、それぞれ別の道で向き合うのがよいと、今は考えています。

一つ目の道:物語で覚える

一つ目の道は、英文を物語の中に置いて覚える方法です。第3回から第9回まで、このブログで続けてきた方法です。

たとえば、次の一文。

642.私は雨の日以外は毎日散歩します。
I take a walk every day except when it rains.

これだけでは、ただの例文です。でも、東大で哲学を学んだ伊藤先生が、大病のあと体を冷やさないよう気をつけながら、雨の日だけは散歩を休んでいた――そんな場面を思い浮かべると、この一文は「先生の日課」に変わります。

物語で覚える方法は、人や場所や気持ちが浮かぶ英文に向いています。恋の文、病気の文、お金の文、散歩の文。場面が浮かぶと気持ちが動き、気持ちが動いた英文は忘れにくくなります。

二つ目の道:単語のコアの意味で覚える

ただ、物語だけではうまくいかない英文もあります。

僕が数えたところ、700選には as を含む英文が73文ありました。全体の10分の1を超えます。この73文に一つずつ物語を作るのは大変ですし、物語を作っても「なぜここで as が使われているのか」は分かりません。

そこで二つ目の道です。単語を文字どおりに読み、その単語の芯にある意味(コアの意味)をつかむ方法です。

as の場合、僕はそのコアを「ほぼイコール」だと考えました。天秤の両側に何かを乗せて、釣り合っているイメージです。

  • He is as strong as a horse. →「彼の強さ」と「馬の強さ」が釣り合っている
  • We presented him with a table clock as a token of our thanks.(120)→「置き時計」と「感謝のしるし」が釣り合っている
  • As science makes progress, old ways give place to new.(484)→「科学の進歩」と「古い習慣の置き換わり」が、同じペースで釣り合いながら進んでいく

訳は「〜と同じくらい」「〜として」「〜につれて」と変わります。でも、芯にある天秤のイメージは一つです。一つのイメージで73文を見渡せるようになると、覚える負担がぐっと軽くなりました。

実はこの道も、連載の最初から始まっていました。第2回で、visit を英英辞典で引くと「go to see(見に行く)」と定義されていて、伊藤先生が「訪れた」ではなく「見に行った」と訳していた話を書きました。単語を文字どおりに、芯の意味から読む。第11回からの as のシリーズは、その考え方を一つの単語で徹底してみたものです。

2つの道は、同じ英文で交わる

面白いことに、同じ英文が、2つの道の両方に登場することがあります。

310.私はまだ夢をみているような楽しい気持ちだった。
I felt as happy as if I were still dreaming.

第3回では、この一文を、伊藤先生が彼女とピクニックに行った日の気持ちとして物語に入れました。第12回では、as の天秤の片側に「夢を見ているという想像」を乗せた例として取り上げました。

物語で場面を覚え、コアの意味で仕組みを理解する。一つの英文に2本の糸が結びつくと、記憶はいっそう抜けにくくなると感じています。

どちらの道を選べばいいか

英文を前にしたら、次の2つを自分に問いかけてみてください。

  • 場面や気持ちが浮かぶ英文か? → 物語で覚える
  • 同じ単語が、違う訳で何度も出てくる英文か? → その単語のコアの意味をつかむ

どちらが合うかは、英文によっても、人によっても違います。僕自身、両方を行き来しながら覚えています。

次回(第11回)からは、二つ目の道で、as の正体に迫っていきます。

日本語から英語を思い出しましょう

今回の記事に登場した英文です。日本語を見て、英文を思い出してみてください。

  1. 私は雨の日以外は毎日散歩します(642)
  2. 卒業に際して、私たちは感謝のしるしとして彼に置き時計を送りました(120)
  3. 科学が進歩するにつれ、古い習慣は新しいものに取って代られる(484)
  4. 私はまだ夢をみているような楽しい気持ちだった(310)

思い出せなかった英文は、場面を思い浮かべるか、as の天秤をイメージしながら、声に出して読んでみてください。

もし、「新・基本英文700選」がお手元になければ、ぜひ手に入れてください。

次回もどうぞよろしくお願いします。

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