これまでのブログでは、英単語:as のコアイメージ「ほぼイコール」を、天秤の比喩を使って説明してきました。今回からは、as を使った慣用句・熟語的な表現を取り上げます。数が多いので、何回かに分けて書いていきます。
慣用句に入る前に、もう一度、第11回で引用した「齋藤秀三郎著・英和中辞典」の as の説明を読み返してみましょう。
as [æz] 注意 — “He is as strong as an ox.” — 先の as と後の as は、同一の as にあらず。先の as は、指摘副詞とて指摘形容詞 “same” “such” “that” に類し、後の as は、関係副詞とて、関係代名詞 “which” “that” に類す。而して上例に換言すれば — “He has the same (degree of) strength which an ox has.” — となる。【asの品詞】第一指摘副詞、第二関係代名詞、第三接続詞、第四前置詞。
この引用は、実は今回取り上げる慣用句のほとんどを見分ける鍵になります。ポイントは2つです。
- 最初の as は「それくらい」と指し示す働き(指摘副詞)
- 後の as は「which」や「that」のように、節をつなぐ働き(関係代名詞)
この2つの役割を頭に入れて、慣用句を見ていきましょう。
「as … as」の仲間(〜する限りでは/〜するとすぐに)
最初の as(あるいは so という仲間)が形容詞・副詞の前に置かれ、後ろにもう一つ as が続いて「S+V」の節を導いている場合、これは原級比較の仲間です。後ろの節の中身が、最初の as が指し示す度合いの中身を明らかにする、という仕組みは、これまで見てきた「as … as」とまったく同じです。
533. 見わたすかぎり砂のほかには何も見えなかった。
As far as the eye could reach, nothing was to be seen but sand.
最初の as で「そのような範囲」と指し示し、as に続く「the eye could reach(目が届く)」という節で、その範囲を明らかにしています。
534. 社会生活に関する限り、進歩は実に遅々たるものであった。
Progress has been very slow indeed, so far as social life is concerned.
こちらは最初が so になっていますが、仕組みは同じです。「そのような範囲」と so で指し示し、as に続く「social life is concerned(社会生活に関係する)」で、その範囲を明らかにしています。
38. 彼は学校を卒業するとすぐ留学することになっているそうです。
I hear he is to go abroad to study as soon as he graduates from school.
これも同じ型です。「それくらい早く」を 最初の as で指し示し、後の as に続く「he graduates(卒業する)」という節で、そのタイミングの中身を明らかにしています。
far(範囲)、soon(時間)と、中身に入る言葉は違いますが、骨格はすべて「as/so+形容詞・副詞+as+S+V」です。
見分け方:as(または so)のすぐ後ろに形容詞・副詞が来て、さらにその後ろに as が続いて S+V の節を導いていたら、この仲間だと考えることができると思います。
否定形「not so much A as B」(AというよりむしろB)
では、この「as … as」を否定文で使いたいときは、どうなるでしょうか。否定文になると、最初の as は so に置き換わります。第11回で扱った「so … that」とも同じ切り替えです。この構文自体は、第11回でも一度取り上げましたが、今回は「指摘副詞としての as」という視点から、もう一度振り返ってみましょう。
142. 問題はその本質よりもむしろ外観である。
The question is not so much what it is as how it looks.
「not so much A」で、いったん「Aほどではない」と度合いを打ち消し、「as B」で「Bと同じくらいだ」と言い直します。結果として「AというよりむしろB」という意味になります。
548. 成功とは、達成物ではなくむしろ、達成する行為のことだ。
Success is not so much achievement as achieving.
同じ仕組みです。「achievement(達成物)ほどではなく」、「achieving(達成する行為)と同じくらいだ」と言い直しています。
見分け方:「not so much A as B」という形そのものが目印です。A を一度否定し、本当に当てはまるのは B の方だ、と言っています。
関係代名詞として働く as(such … as/the same … as)
「齋藤秀三郎著・英和中辞典」の as の説明の後半にあったとおり、後の as は「関係代名詞」のような働きをします。特に、前に “such” や “same” が来ると、この性質がはっきり表れます。
140. ためになるような友人を選べといいます。そういうわけで私は青木君と親しくしているのです。
Choose such friends as will benefit you, they say. That is why I am on intimate terms with Mr. Aoki.
「such friends as will benefit you」は「friends which will benefit you(あなたのためになる友人)」とほぼ同じ意味です。as を which に置き換えても文が成立することが、as が関係代名詞のように働いている証拠です。as の直後には、すぐに動詞(will benefit)が来ています。つまり as 自体が「will benefit」の主語(=主格)として働いていると解釈できます。
473. 男にだまされた女の数も、女に裏切られた男の数も数え切れない。
We cannot enumerate such women as have been deceived by men, and such men as have been betrayed by women.
こちらも同じです。「such women as have been deceived by men」の as を関係代名詞の who に置き換えて「women who have been deceived by men」としても、意味はほぼ同じです。
見分け方:「such+名詞+as+S(+V)」の形。as を which/that に置き換えても意味が通じれば、関係代名詞として働く as です。
こちらも同じ構造です。「such women as have been deceived by men」は「women who have been deceived by men」とほぼ同じ意味です。as の直後にすぐ動詞(have been deceived)が来ており、as が「have been deceived」の主語(=主格)を務めています。
見分け方:「such+名詞+as+V」の形。as を which/that に置き換えても意味が通じれば、関係代名詞として働く as です。as のすぐ後ろに動詞が来ているので、as は主格です。
続いて、as が動詞の目的語の働きをする「目的格」のパターンです。この「the same … as」の形は、第11回でも一度取り上げましたが、同じく「指摘副詞としての as」の視点から振り返ってみます。
474. あなたの姉さんが持っているのと同じ辞書が欲しい。
I want the same dictionary as your sister has.
「the same dictionary as your sister has」は「the same dictionary which your sister has(あなたの姉さんが持っているのと同じ辞書)」とほぼ同じ意味です。same も such と同じく「齋藤秀三郎著・英和中辞典」の中で「指摘形容詞」として名指しされている言葉です。ここでは as の後に「your sister(主語)has(動詞)」と、主語と動詞がそろって続いています。つまり as 自体は、”has” の目的語(=目的格)、すなわち「your sister has it(それを持っている)」の「it」に当たる働きをしています。
見分け方:「the same+名詞+as+S+V」の形。as の後ろに主語と動詞がそろって続いていれば、as は目的格と解釈できます。こちらも as を which に置き換えて意味が通じるかを確認します。
日本語から英語を思い出しましょう
今回取り上げた8個の英文を思い出してみましょう。
- 見わたすかぎり砂のほかには何も見えなかった(533番)
- 社会生活に関する限り、進歩は実に遅々たるものであった(534番)
- 彼は学校を卒業するとすぐ留学することになっているそうです(38番)
- 問題はその本質よりもむしろ外観である(142番)
- 成功とは、達成物ではなくむしろ、達成する行為のことだ(548番)
- ためになるような友人を選べといいます。そういうわけで私は青木君と親しくしているのです。(140番)
- 男にだまされた女の数も、女に裏切られた男の数も数え切れない(473番)
- あなたの姉さんが持っているのと同じ辞書が欲しい(474番)
今回扱った8個の英文は、どれも齋藤秀三郎の説明する「最初の as は指摘、後の as は関係代名詞」という構造がそのまま当てはまるグループでした。見分け方さえ押さえておけば、初めて見る英文でも、同じ手順で読み解けるはずです。慣れてきたら、わざわざ「指摘副詞だから…」と考えなくても、自然に意味が取れるようになると思います。
もし、「新・基本英文700選」がお手元になければ、ぜひ手に入れてください。そして、英文をどのように解釈するのか、伊藤和夫先生の視点を想像されると、記憶に残りやすくなると思います。
今回は、齋藤秀三郎の説明と直接つながる慣用句を取り上げました。次回も引き続き、as を使った慣用句を取り上げていく予定です。どうぞよろしくお願いします。


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