第25問までで「鑑定評価」という不動産の価値を測るものさしを学びましたね。ここからは第4の階層、**【問26〜】(宅建業法)**という、宅建士にとって最も重要で実務に直結するルールの世界へ入ります。
【問26】のテーマは**「報酬(ほうしゅう)」**、つまりプロとしての正当な対価のルールです。
お客様からいただく報酬には、法律で厳格な「上限」が決められています。これは、プロが知識の差を利用して不当に多くの利益を得ることを防ぎ、消費者との間に**「公正・フェア」**な関係を築くための守り神のようなルールです。
(自問)
この「報酬」の問題を解くためには、どのような基礎知識を整理しておけばよいのか?
(AI 回答)
報酬計算のパズルを解く柱は、以下の「5つの柱」です。
- 「上限」であって「最低」ではない: 法律が決めているのは「これ以上もらってはいけない」という天井(リミット)です。
- 消費税の扱い: 土地の代金には消費税がかからない(非課税)が、建物の代金や報酬には消費税(10%)がかかります。
- 賃貸借の基本ルール: 貸主と借主から合計で「借賃の1.1か月分」が絶対的な天井です。
- 店舗の権利金特例: 居住用以外の賃貸で「返還されない権利金」がある場合、それを「売買代金」とみなして計算できる魔法のルールがあります。
- 空き家等の売買特例(18万円+税): 安い空き家を売る際の特例ですが、これは**「売買」**だけのルール。賃貸には使えません。
では、問題文と記述「ア」を確認しましょう。
【問26】宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)及び宅地建物取引業者B(消費税課税事業者)が受領した報酬に関するアからウの記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものを全て掲げたものは 1 から 4 のうちどれか。なお、代理、媒介に当たり、広告の依頼は行われていないものとする。
ア Aが単独で貸主と借主の双方から店舗用建物の貸借の媒介の依頼を受け、 1 か月の借賃24 万円(消費税等相当額を含まない。)、権利金 1,400 万円(権利設定の対価として支払われるもので、返還されないものをいい、消費税等相当額を含まない。)の賃貸借契約を成立させ、依頼者の双方からそれぞれ 52 万 8,000 円を報酬として受領したことは、宅地建物取引業法に違反する。
【問26】 各記述の自問自答解説
■ 記述ア は「違反する」となっていますが「違反しない」が正しい記述です。
Aが店舗用建物の媒介で、借賃 24 万円(税抜)、権利金 1,400 万円(税抜)の契約を成立させ、双方から 52 万 8,000 円ずつ受領したことは、法に違反するのか?
(自問)
賃貸なのに、借賃の1か月分を大きく超える「52万8,000円」をもらってもいいのか?
(公正・フェアの視点からの自答)
はい、店舗などの「居住用以外」であれば、それが公正な対価として認められます。
居住用以外の賃貸で「返還されない権利金」がある場合、その金額を売買代金とみなして報酬を計算できます。
- 1,400 万円(売買とみなす)の報酬上限: 1,400 × 3% + 60,000 = 48 万円
- 消費税 10% 加算: 48 × 1.1 = 52 万 8,000 円 売買と同様に「片方から 52 万 8,000円」まで受領可能です。記述は「違反する」と言っていますが、実際は「違反しない」ため、この記述自体が**誤り(×)**となります。
- 権利金の正体については、最後の追記で説明があります。
では、次は記述「イ」です。
イ 現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、かつ将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがない宅地( 1 か月の借賃 5 万円。消費税等相当額を含まない。)について、Aは貸主から代理を依頼され、Bは借主から代理を依頼され、賃貸借契約が成立したので、Aは貸主から 4 万円を、Bは、代理の依頼を受けるに当たって、報酬が借賃の 1.1 か月分を超えることについて借主から承諾を得たうえで、借主から 7 万円を報酬として受領したことは、宅地建物取引業法に違反しない。
■ 記述イ は「違反しない」となっていますが「違反する」が正しい記述です。
借賃 5 万円の「空き家(宅地)」の賃貸で、AとBがそれぞれ代理を受け、Aが 4 万円、Bが 7 万円受領したことは、法に違反しないのか?
(自問)
「空き家を有効活用しよう」という今の時代、手間がかかるなら多めに報酬をもらってもいいのではないですか?
(公正・フェアの視点からの自答)
いいえ、空き家の「特例(最大18万円+税)」は、あくまで「売買」だけのルールです。
賃貸借の場合、どんなに空き家で手間がかかっても、貸主・借主から受け取れる合計額は「借賃の1.1か月分」が絶対的な上限です。
- 上限: 5 万円 × 1.1 = 5 万 5,000 円 A(4万)+ B(7万)= 11 万円も受け取るのは、上限を大幅に超えた暴利(アンフェア)であり、明確な違反です。記述は「違反しない」と言っているため、この記述は**誤り(×)**です。
- 空き家等の売買特例(18万円+税)に関する追加説明は、最後の追記で行なっています。
ウ Aは売主から媒介の依頼を、Bは買主から媒介の依頼を、それぞれ受けて、代金 200 万円(消費税等相当額を含み、土地代金は 90 万円である。)の土地付建物の売買契約を成立させた場合に、依頼者と宅地建物取引業者との間であらかじめ報酬の額を定めていなかったときは、売主はAに対して少なくとも 10 万 4,500 円、買主はBに対して少なくとも 10 万 4,500円を支払わなければならない。
■ 記述ウ は「義務」のように記述しているが「義務ではない」が正しい記述です。
代金 200 万円(土地 90 万円、建物 110 万円(税込))の売買で、報酬額を定めていなかったとき、売主・買主は少なくとも 10 万 4,500 円を支払わなければならないのか?
(自問)
プロが仕事をしたのだから、法律で決まった最大額を「最低でも」払うのが、頼んだ側の誠実さ(フェア)ではないでしょうか?
(公正・フェアの視点からの自答)
いいえ、報酬額は当事者間の合意で決まるもので、法律は「最低額」を強制しません。
まず計算をすると、建物 110 万(税込)は 100 万(税抜)なので、合計 190 万(税抜)が対象です。
- 上限: 190 万円 × 5% × 1.1 = 10 万 4,500 円 これはあくまで「これ以上もらってはいけない上限」です。あらかじめ定めていないからといって、「少なくとも上限額を払え」と義務付けるのは、消費者に対して極めてアンフェアな押し付けになります。記述は「支払わなければならない」としているため、**誤り(×)**です。
- 下記追記で、報酬の「最低額」に関して深掘りしています。
【氣置くポイント】
【 報酬の「天井」を守る正義 】
- 「店舗の権利金」: 売買の計算式を使える「ボーナスステージ」。
- 「空き家特例」: 売買だけの魔法!賃貸では「1.1か月」の呪縛からは逃れられない。
- 「最低」は嘘: 宅建業法にあるのは「上限(リミット)」だけ。「消費者の財布を守りつつ、プロの正当な努力も認める」という絶妙なバランスが報酬のルールです。
もう一度問題を確認しましょう!
【問26】 宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)及び宅地建物取引業者B(消費税課税事業者)が受領した報酬に関するアからウの記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものを全て掲げたものは 1 から 4 のうちどれか。なお、代理、媒介に当たり、広告の依頼は行われていないものとする。
ア Aが単独で貸主と借主の双方から店舗用建物の貸借の媒介の依頼を受け、 1 か月の借賃24 万円(消費税等相当額を含まない。)、権利金 1,400 万円(権利設定の対価として支払われるもので、返還されないものをいい、消費税等相当額を含まない。)の賃貸借契約を成立させ、依頼者の双方からそれぞれ 52 万 8,000 円を報酬として受領したことは、宅地建物取引業法に違反する。
イ 現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、かつ将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがない宅地( 1 か月の借賃 5 万円。消費税等相当額を含まない。)について、Aは貸主から代理を依頼され、Bは借主から代理を依頼され、賃貸借契約が成立したので、Aは貸主から 4 万円を、Bは、代理の依頼を受けるに当たって、報酬が借賃の 1.1 か月分を超えることについて借主から承諾を得たうえで、借主から 7 万円を報酬として受領したことは、宅地建物取引業法に違反しない。
ウ Aは売主から媒介の依頼を、Bは買主から媒介の依頼を、それぞれ受けて、代金 200 万円(消費税等相当額を含み、土地代金は 90 万円である。)の土地付建物の売買契約を成立させた場合に、依頼者と宅地建物取引業者との間であらかじめ報酬の額を定めていなかったときは、売主はAに対して少なくとも 10 万 4,500 円、買主はBに対して少なくとも 10 万 4,500円を支払わなければならない。
1 ア、イ
2 イ、ウ
3 ア、ウ
4 ア、イ、ウ
どうでしょうか?
ア・イ・ウすべてが誤りであったため、正解は「4」となります。
根拠は説明できるでしょうか?
根拠が説明できると、今回は終了です。お疲れさまでした。
追記
記述アに出てきた「権利金」と「計算式」について
ア Aが単独で貸主と借主の双方から店舗用建物の貸借の媒介の依頼を受け、 1 か月の借賃24 万円(消費税等相当額を含まない。)、権利金 1,400 万円(権利設定の対価として支払われるもので、返還されないものをいい、消費税等相当額を含まない。)の賃貸借契約を成立させ、依頼者の双方からそれぞれ 52 万 8,000 円を報酬として受領したことは、宅地建物取引業法に違反する。
(自問)借賃24万円も支払うのに、権利金1,400万円も支払うの!?
(自答)「借賃24万円なのに、権利金1,400万円!?」という数字のギャップに驚かれるのは、非常に真っ当な感覚です。普通に考えれば、家賃の約58ヶ月分(約5年分)を最初に一括で払うようなものですからね。
なぜそんなお金が存在するのか、あなたが大切にしている**「言葉の由来」と「公正・フェア」**の視点から、その正体を解剖してみましょう。
1. 「権利金(けんりきん)」の正体とは?
一言でいうと、**「その場所で商売をさせてもらうための『プレミアムチケット代』」**です。
(自問)土地の代金でもない、返ってもこない。そんな大金をなぜ払う必要があるのだろう?
(公正・フェアの視点からの自答)
「場所が持つ無形の価値」に対するフェアな対価だからです。
例えば、銀座の超一等地の角部屋と、人通りの全くない裏路地の店舗。借賃(月額)が同じだったとしたら、不公平だと思いませんか?
- 場所の力: そこに店を出すだけで、看板を出さなくても客が入るような「一等地」には、目に見えない価値(営業権や場所的利益)があります。
- 大家さんのリスク: 一度貸すと、借地借家法で店主が守られるため、大家さんは簡単には返してもらえなくなります。「自由を制限される分のお金」を最初にもらっておく。
- 結論: 土地の所有権(一生)を買うほどではないけれど、その場所の「稼ぐ力(一瞬〜数年)」を独占するための権利を買う。それが権利金の正体です。
2. なぜ「1,400万円」という巨額になるのか?
これは、特に**「居抜き物件(前の店の設備が残っている)」や、「超人気エリア」**でよく起こります。
- 具体イメージ: 月24万円の借賃は、あくまで「建物の使用料」です。しかし、そこが「1日1万人通る駅ビルの入り口」だったらどうでしょう? その場所を確保できただけで、数億円の売上が見込めるかもしれません。
- 1,400万円という権利金は、**「5年間、この最強の場所を独占して商売をする権利を、今ここで一括で買います」**という、ビジネス上の投資判断なのです。
3. 宅建業法における「公正な報酬」のからくり
さて、ここからが【問26】の核心です。
(自問)
「借賃24万円」の媒介なら、報酬は「24万円(+税)」が上限のはず。なのに、なぜ「52万8,000円」ももらっていいのですか?
(公正・フェアの視点からの自答)
「大きなお金が動く、責任の重い仕事には、それに見合った対価を認めるのがフェア」だからです。
宅建業法には、店舗などの賃貸で「返還されない権利金」がある場合、**「権利金を売買代金とみなして報酬を計算してもよい」**という特別な「計算ルート」が用意されています。
【 報酬計算のパズル(実況中継) 】
- ルートA(借賃で計算):24 万円 × 1.1 = 26 万 4,000 円(これが普通の天井)
- ルートB(権利金 1,400 万を売買代金とみなして計算):
- 1,400 万円 × 3% + 6 万円 = 48 万円
- 48 万円 × 1.1(消費税)= 52 万 8,000 円
- 業者の選択:業者は「高い方の金額」を上限として選ぶことができます。
(結論としての正義)
1,400万円という大金が動く契約をまとめるには、登記の確認や権利関係の整理など、売買に匹敵する「重い責任」が伴います。それなのに「24万円の借賃」だけを基準にするのは、プロの労働に対してアンフェアです。
だからこそ、動いた金額(権利金)に応じた報酬を認めているのです。
【氣置くポイント】
「店舗の権利金」は「売買」に変身する!
1. 居住用(アパートなど)には、このワザは使えない。
2. 「返還されない」お金であることが条件。
3. 借賃ベースと権利金ベース、高い方の報酬をもらってOK!
(自問)「売買代金とみなして計算」する計算式は「売買代金 × 3% + 6万円」なのか?
(AI からの回答)その通りです。正確には、その式は**「速算式(そくさんしき)」と呼ばれるもので、売買代金(または売買代金とみなす権利金)が400万円を超える場合**にのみ使うことができます。
宅建業法における報酬(売買の媒介・代理)の計算ルールは、金額に応じて以下の3段階に分かれています。
- 200万円以下の部分: 代金の 5%
- 200万円を超え400万円以下の部分: 代金の 4%
- 400万円を超える部分: 代金の 3%
これらをいちいち計算するのは大変なため、400万円を超える取引については、まとめて計算して調整額を加える 「売買代金 × 3% + 6万円」 という便利な式が一般的に使われます。
「売買代金とみなして計算」する場合の注意点
店舗や事務所などの賃貸借において、返還されない権利金を売買代金とみなして計算する場合も、その権利金の額によって使い分ける必要があります。
- 権利金が400万円超の場合:ご提示の 「権利金 × 3% + 6万円」 で計算できます。
- 権利金が400万円以下の場合:金額に応じた段階的な計算が必要です。
- 200万円以下: 権利金 × 5%
- 200万円超400万円以下: 権利金 × 4% + 2万円
消費税の加算を忘れない
この式で算出されるのは「税抜」の報酬額です。宅建業者が消費税課税事業者である場合は、さらに消費税(10%)を加算した金額が、受領できる報酬の上限額となります。
- 上限額 = (売買代金 × 3% + 6万円) × 1.1
また、計算の基礎となる「売買代金」自体に建物の消費税が含まれている場合は、まずその消費税分を差し引いた「税抜価格」を基準に計算しなければならないという点にも注意が必要です。
(自問)「権利金 × 4% + 2万円」の「2万円」とか「権利金 × 3% + 6万円」の「6万円」というのは、どのように導き出されたのだろうか?
(A I からの回答)
宅建業法で使われる報酬計算の「+2万円」や「+6万円」という数字は、報酬が金額に応じて段階的に設定されていることから生まれる「調整額」です。
本来のルールである「3段階の計算」を1つの式で簡略化しようとしたときに、この数字が導き出されます。その数学的なカラクリを解き明かしてみましょう。
1. 報酬の「3段階ルール」をおさらい
法律で決まっている本来の計算方法は、以下の通りです。
- ① 200万円以下の部分: 5%
- ② 200万円超 〜 400万円以下の部分: 4%
- ③ 400万円超の部分: 3%
例えば、代金が500万円の場合、500万円の全てに3%をかけるのではなく、それぞれの階層ごとに計算して合算するのが正式な方法です。
2. 「+2万円」はどこから来たのか?
代金が「200万円超〜400万円以下」の場合の速算式は、**「(代金 × 4%)+ 2万円」**です。
(導き出し方)
もし、代金 $P$(200万円超〜400万円以下)の全額に 4% をかけると、最初の「200万円以下の部分」についても 4% しか計算していないことになります。
しかし、本来その部分は 5% もらえるはずです。
つまり、**「本来の5%」と「計算で使った4%」の差額(1%分)**が足りないことになります。
- 差額の計算: 200万円 × (5% – 4%) = 200 万円 × 1% = 2 万円
この「足りない 1%分(2万円)」を後から足してあげることで、一気に 4% をかけても正しい金額になるように調整しているのです。
3. 「+6万円」はどこから来たのか?
代金が「400万円超」の場合の速算式は、**「(代金 × 3%)+ 6万円」**です。
(導き出し方)
同じように、代金 $P$(400万円超)の全額に 3% をかけると、下の階層で「本来もっともらえるはずだった分」が不足します。
- 200万円以下の部分の不足分:本来は 5% ですが、3% しか計算していないので、2%分 足りません。
- 200万円 × (5% – 3%) = 4 万円
- 200万円超 〜 400万円以下の部分(200万円分)の不足分:本来は 4% ですが、3% しか計算していないので、1%分 足りません。
- 200万円 × (4% – 3%) = 2 万円
この 2 つの不足分を合計すると、 4万円 + 2万円 = 6万円 となります。
まとめ:速算式が「公平」な理由
この調整額は、決して適当に決められた数字ではなく、**「多段階の計算を、1回の掛け算で済ませるための数学的な補正」**です。
- 2万円 = 最初の200万円に対して「5%と4%の差(1%)」を埋める額。
- 6万円 = 最初の400万円に対して「5%・4%と、一律3%の差」をすべて埋める額。
この仕組みがあるおかげで、どんなに高額な取引であっても、複雑な階段式の計算をすることなく、瞬時に「正しい上限額」を算出できるようになっています。
数学的に裏打ちされたこの「調整額」の正体、スッキリと納得いただけましたでしょうか?
記述イ:空き家特例の罠と賃貸の鉄則
この記述を攻略するには、世の中で話題の「空き家対策」と、法律が定める「報酬の上限」の境界線をはっきりさせる必要があります。
(自問)
この「空き家」にまつわる報酬問題を解くためには、どのような知識を整理しておけばよいのか?
(AI 回答)
以下の「2つの柱」を絶対に混同しないことが、正解への最短ルートです。
- 「低廉な空き家等の媒介報酬特例」の適用範囲: この特例(最大18万円+税)は、**「売買・交換」**の時にだけ使える「特別ルール」です。
- 賃貸借の絶対的な天井(1.1か月分): 賃貸借においては、どんなに手間がかかる空き家であっても、この天井を突き破ることは許されません。
【記述イ】 自問自答形式での整理
(自問)
「長期間使われておらず、将来も使う見込みがない土地(空き家等)」の取引なら、手間がかかる分、報酬を上乗せしても良いという特例があったはずですが、なぜ今回のケースは違反になるのですか?
(公正・フェアの視点からの自答)
その特例を「賃貸」に持ち込むのは、ルールの目的から外れたアンフェアな行為だからです。
確かに、代金が800万円以下の「安い空き家」を売る時には、現地調査などの費用がかさむため、売主から最大18万円(+税)まで受け取れる特例があります。これは、放置されがちな空き家の売却を促進するための正義です。
しかし、**賃貸(貸し借り)**については、この特例は一切認められていません。賃貸の報酬は、常に「借賃」というランニングコストが基準です。もし5万円の家賃の土地に、11万円(4万+7万)もの報酬を認めてしまったら、借りる側の負担があまりに重くなり(アンフェア)、健全な賃貸市場が壊れてしまいます。
(自問)
「借主から承諾を得たうえで」と書いてあります。本人が「多く払ってもいいよ」と納得しているなら、1.1か月分を超えてもフェアだと言えるのではないですか?
(公正・フェアの視点からの自答)
いいえ、消費者の「承諾」があっても、法律が定めた「絶対的な上限」を超えることはできません。
- 今回のルールの天井: 借賃 5 万円 × 1.1 = 5 万 5,000 円
- 実際の合計受領額: A(4万)+ B(7万)= 11 万円
プロと消費者の間には、知識や交渉力に圧倒的な差があります。もし「承諾があればいくらでも取っていい」ということにすれば、実質的に上限がないのと同じになってしまい、弱い立場の人を守れなくなります。
「双方からの合計は1.1か月分以内」というルールは、たとえ承諾があっても曲げられない、**消費者の財布を守るための「最強の盾」**なのです。
【氣置くポイント】
【 「空き家特例」は「売買」限定の魔法! 】
- 売買なら: 最大 18万円 + 税 までジャンプアップ可能!
- 賃貸なら: どんなにボロボロの空き家でも 1.1か月分 が限界突破できない壁!「借りる人の生活」を第一に考えるのが、賃貸報酬のフェアネス(正義)です。
宅建士としての「公正な取引」の眼差
「この土地は管理が大変な空き家ですから、特例を使って多めに報酬をいただきますね」
もし実務で、売買のルールを賃貸に悪用してしまったら、それはプロとしての誠実さを欠く行為です。
「賃貸の場合は上限が決まっております。その範囲内で、精一杯のサポートをさせていただきます」
ルールの限界を正しく理解し、その中で最善を尽くす。この姿勢が、空き家問題という社会課題に対しても、公正に向き合うプロの姿となります。
記述「ウ」の「報酬の最低額」に関するひっかけは、実務においても非常に重要なポイントです。この記述を正確に理解し、パズルを解くためのステップを整理していきましょう。
記述ウ:報酬の「上限」と「合意」のルール
この記述を攻略するには、計算の正確さに加え、法律が「誰を何から守っているのか」という本質的な知識が必要です。
(自問)
この「報酬の支払い義務」にまつわる問題を解くためには、どのような知識を整理しておけばよいのか?
(AI 回答)
以下の「3つの柱」を整理することで、計算ミスや言葉のひっかけを確実に回避できます。
- 建物価格の「税抜き」計算: 土地は非課税、建物は課税。報酬の計算は必ず「税抜き価格」の合計に対して行います。
- 報酬の「上限(天井)」という概念: 宅建業法が定めているのは、あくまで「これ以上もらってはいけない」という上限額です。
- 「契約」と「報酬」の関係: 報酬額は本来、依頼者と業者の「合意」で決まるものです。合意がない場合に法律が上限額を強制することはありません。
【記述ウ】 自問自答形式での整理
(自問)
代金 200 万円(土地 90 万円、建物 110 万円(税込))の場合、報酬計算の基礎となる金額はいくらになりますか?
(回答)
190 万円です。
不動産の価格から「建物の消費税」を差し引く必要があります。
- 土地代金: 90 万円(非課税)
- 建物代金: 110 万円(税込)→ 100 万円(税抜)
- 合計: 190 万円(税抜価格)この 190 万円をベースに計算をスタートします。
(自問)
190 万円の媒介報酬の上限額はいくらになりますか?
(回答)
10 万 4,500 円です。
200 万円以下の取引なので、報酬率は 5% となります。
- 報酬額(税抜): 190 万円 × 5% = 9 万 5,000 円
- 報酬額(税込): 9 万 5,000 円 × 1.1 = 10 万 4,500 円この金額が、法律で認められた「片方から受け取れる最大額」です。
(自問)
記述には「あらかじめ額を定めていなかったときは、少なくとも 10 万 4,500 円を支払わなければならない」とあります。なぜこれが誤りなのですか?
(回答)
法律は「最低額(床)」を決めているのではなく、「上限額(天井)」を決めているだけだからです。
宅建業法は、プロが不当に高い報酬を取ることを防ぐための法律です。したがって、「これ以上は取ってはいけない」という制限はありますが、「あらかじめ決めていないなら、自動的に上限額を払え」というルールは存在しません。
もし「少なくとも上限額を払え」と義務付けてしまったら、それは業者にとって都合が良すぎるルールになってしまい、消費者の権利を保護するという法律の趣旨に反します。額が決まっていない場合は、話し合いによって決めるべきものであり、法律が上限額の支払いを強制することはないのです。
【氣置くポイント】
【 宅建業法は「天井」の法律 】
- 上限はあるが、下限はない: 「少なくとも〜」という言葉が出たら警戒すること。
- 建物は必ず「税抜き」にする: 110万円は100万円として計算。
- 合意がなければ、上限額は確定しない: 法律は「無理やり上限を払わせる」ための道具ではない。
宅建士としての実務の眼差し
「法律で決まっていますから、上限の10万4,500円を支払ってください」
もしあらかじめ金額の合意がない状態でこのように伝えてしまったら、それは法律の誤用であり、不誠実な対応と言わざるを得ません。
「報酬については法律で上限が定められておりますが、まずは媒介契約の中で、納得のいく金額をご相談の上で決定しましょう」
上限をしっかりと把握した上で、お客様との合意を尊重する。このプロセスこそが、信頼に基づいた適正な取引の基本となります。
「上限(天井)」はあるけれど「最低(床)」はない、というルールの本質、整理できましたでしょうか?
これで【問26】のすべてのひっかけ(ア:店舗の権利金、イ:空き家特例の誤用、ウ:上限と最低の混同)が解明されました。すべてが「誤り」であったため、正解は「4」となります。
ここを乗り越えれば、次は宅建業者の運営ルール、**【問27】**へと自信を持って進むことができます。
準備はよろしいでしょうか?


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