Web3の重要概念に**『トラストレス』**があります。
「トラストレス(Trustless)」という言葉を初めて聞いたとき、多くの人が「え、そんなに信用できない世界なの?」と不安を感じるのではないでしょうか。
直訳すると「信用がない」という意味で、なんだか殺伐としたイメージが浮かびます。 誰も信じられない、裏切りだらけの社会を想像して、怖いと思うのも無理はありません。
しかし、真実はまったく逆です。
「トラストレス」とは、**「他人を信用する必要がないくらい、確実に実行される仕組み」**のことを指します。
つまり、「信用しなくてもいい」からこそ、安心できるという逆転の発想なのです。
この記事では、そんな「トラストレス」の正体を、年配の方でもわかりやすい例えを交えながら解き明かします。 なぜこの冷たい響きの言葉が、実は「安心」と「公平」をもたらすのか?
読み終わる頃には、「人を信じる」社会から「数式やプログラムを信じる」社会への移行が、どれほど革新的かわかるはずです。
1. 「信用(トラスト)」の今と昔
私たちの社会は、古くから「信用(トラスト)」の上に成り立ってきました。 特に、Web2.0時代(今のインターネット、例えばGoogleやFacebookが中心の時代)では、それが顕著です。
昔の村社会を思い浮かべてみてください。 隣の農家から米を買うとき、「この人はちゃんと良い米をくれるはず」と相手を信用していました。もし裏切られたら、村八分になるという「社会的プレッシャー」が抑止力になっていたのです。
今も同じです。 銀行でお金を預けるとき、私たちは「銀行員が横領しない」「銀行が倒産しない」と信じています。
オンライン通販で商品を買うとき、「店主が偽物を送らないはず」「Amazonがきちんと管理してくれるはず」と、相手や企業を信用せざるを得ません。
「人を信じる」ことのリスク
しかし、この「人や企業への依存」には大きなリスクがあります。
- 人はミスを犯します。
- 嘘をつくこともあります。
- 企業は利益優先でルールを変えたり、倒産したりする可能性があります。
例えば、2008年のリーマンショックでは、多くの銀行が信用を失い、世界中が混乱しました。 日本でも、過去に銀行の不正事件が何度も起きています。
つまり、今の社会は**「相手が良い人であることを祈る(性善説)」**で回っているのです。
この信用を維持するためのコストも膨大です。 銀行の手数料、弁護士の費用、保険料――これらはすべて、「信用できないかもしれない」という不安をカバーするためのものです。
この「不確かな信用」の問題を、根本的に解決するのが「トラストレス」の考え方です。
2. デジタル時代の「自動販売機」
「トラストレス」を理解するのに最適な例えが、**「自動販売機」**です。
想像してみてください。 コンビニの店員さんにジュースを買う場合、「お釣りを正しくくれるかな?」「今日は機嫌が悪いかも?」という小さな不安が、ゼロとは言えません。
店員さんを「信用(トラスト)」する必要があるからです。
一方、自動販売機はどうでしょう?
🥤 自動販売機の場合 150円を入れてボタンを押せば、どんな時間帯でも、誰が作った機械でも、必ずジュースが出てきます。 店員さんの気分や人間性は関係ありません。
「機械のルール(プログラム)」が正しく設計されていれば、取引は100%確実に成立するのです。 ここに**「人を信用する必要がない(トラストレス)」**という状態が生まれます。
Web3の基盤である「ブロックチェーン」は、まさにこの自動販売機の進化版です。
ブロックチェーンとは、世界中に分散された**「絶対に壊れない、誰も中身を改ざんできないガラス張りの自動販売機」**のようなネットワークです。
一度記録された取引は、みんなが見張っているので、誰かが勝手に変えることができません。 数学的なルール(アルゴリズム)とプログラムが、すべてを自動的に処理します。
「人を信じる」代わりに、「数式とコードを信じる」――これがトラストレスの核心です。
3. 具体的なメリット:何が変わるのか?
概念がわかったところで、トラストレスがもたらすメリットを具体的に見てみましょう。
公平性
プログラムは差別をしません。相手が大企業の社長でも、発展途上国の農民でも、同じルールで処理されます。
例えば、伝統的な融資では、銀行員の判断で「この人は信用できない」と断られることがあります。 でも、Web3の分散型金融(DeFi)では、プログラムが条件(例:担保の額)をチェックし、自動的に貸し出します。人間の偏見が入り込む余地がないのです。
コスト削減
「信用できる仲介人」を雇うための手数料が不要になります。
銀行の国際送金は、数千円の手数料と数日かかりますが、ビットコインなら数百円で数分しかかかりません。 結果として、経済全体が効率化され、貧困層にもチャンスが広がります。
スピードと可用性
誰かの承認を待つ必要がなく、24時間365日稼働します。夜中や休日でも、プログラムが即座に実行します。 災害時でも、ブロックチェーンは分散されているので、止まりません。
4. 実際の事例で実感してみよう
ビットコイン
銀行を信用しなくても、送金が絶対に届く仕組みです。 例えば、あなたが孫に海外留学の費用を送るとき、ビットコインを使えば、中間業者の手数料なしで即時着金します。ブロックチェーンが「この取引は正しい」と世界中で検証します。
2025年現在、エルサルバドルではビットコインを法定通貨として採用し、国民が日常的に使っています。
スマートコントラクト(自動契約)
これは**「条件が満たされたら自動実行される契約」**です。
例えば、飛行機が欠航した場合、保険会社との交渉なしに、保険金が自動的に支払われます。 プログラムが「欠航の証明」を確認したら、保険金が即座に振り込まれます。 人間の判断が入らないので、「保険会社が渋る」リスクがゼロです。
NFT(デジタルの本物証明)
アーティストがデジタルアートを売るとき、ブロックチェーンが「これは本物」と証明します。 コピーされ放題のWeb2.0に対し、所有権が明確で、信用(トラスト)不要です。
結論:冷たいようで暖かい技術
まとめると、「トラストレス」とは「不信」ではなく、**「検証可能で自動的な信頼」**のことです。
人を信じる社会から数式を信じる社会への移行――これは、裏切りやミスのない、もっと安心できる世界を意味します。
「あの人を信じていたのに騙された」という悲劇が減り、余計な心配に使っていたエネルギーを、創造的なことに振り向けられるようになります。
最終的に、トラストレスは冷たいようで暖かい技術なのです。 人間の弱さを補い、真の自由を与えてくれます。
あなたも、Web3時代を体感するために、少額の仮想通貨を取り扱ってみてはいかがでしょうか? そこに、未来の「信用できないからこそ信じられる」世界が待っています。


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